AIとの緊張関係と共生
鳥集徹「医学部」(文春新書)に以下の記述があります。
AIの能力が人間に追いつき加速度的に追い越していく時点を「シンギュラリテイ」(技術的特異点)と呼び、2045年か早ければ2030年頃には到達すると予測されている。もちろん医学医療界にもそのときは訪れるだろう。そのときにはこうした診断分野だけではなく難病の治療法の発見や画期的な新薬の開発、その効果判定もAIが行うと考えられている。さらに我々がまだ知り得ていない生命の神秘をAIが解き明かしてしまう可能性すら示唆されている。そうなれば医師の仕事はかなりの部分がAIに取って代わられるだろう。(139頁)
弁護士業界の「シンギュラリテイ」到達が何時か?これを書いている2019年3月の時点で宣言は為されていません。が、ネット上で「法律問題の情報を与えて答えを導かせたところ、弁護士より早く正確に答えを出した」との記事を拝見しました。AIはブレークスルーが起こると瞬時に技術的知見が拡がるので、2045年などという生優しいものではなく、2030年頃、弁護士界も「シンギュラリテイに到達した」と宣言されるかもしれません。まず合理性が貫徹される企業法務は劇的に様変わりするでしょう。都市における顧問弁護士需要が一気に縮小する可能性は否定できません。交通事故など過去の膨大なデータが蓄積されている分野も速やかにAI化される可能性があります。相続の分野も遺産内容と親族関係を正確に入力しさえすれば(数字上は)直ぐに最適解が導かれるようになるのかもしれません。そのときに弁護士はどうするのか?現在、57歳の私は2030年の時点で68歳です。既に引退しているのかもしれません。が、これから弁護士として生きる若者たちはどうなるのか?AIとの共生こそが未来を生きる若手弁護士たちの課題なのでしょうか。