限られた時間の配分
向谷匡史「ホストの実践心理術」(KKベストセラーズ)の記述。
私が銀座のクラブに行ったときのこと。待ちに待ってお目当てのホステス嬢がついてくれたと思ったら、黒服がすーっと寄ってきて膝を落としながら彼女の耳元で二言三言。彼女は小さく頷くとニコッと営業用スマイルを私に見せて「ゴメーン。ごちそうさま」鼻にかかった声で言って、そそくさと次のテーブルに移っていった。(売れっ子だからしょうがないか)と自分に言い聞かせつつも(乾杯もしていないのに、ごちそうさまもねえだろう)釈然としない思いが残るのである。ホストクラブも同様だ。売れっ子になるとテーブルをいくつも回る。女性客は男性のようにヤセ我慢をしないから「なにさ」と嫉妬の怒りを買うことになる。これではマズい。一流ホストはどうするか。小ワザを使う。たとえばタバコの箱。席を立つときにタバコをテーブルにわざと置いていく。すると客は(すぐ戻ってくるつもりなんだ)という安心感を持ち(私のこと一番気に入ってくれてるんだわ)と解釈してくれる。
ホステスは自分の時間を売るのが商売。全ての顧客に満足して頂けるかが勝負。前半のホステスは客に憮然たる気持ちにさせている点で失敗しています。後半のホストは凄い。客は「私のこと一番気に入ってくれてるんだわ」と勝手な解釈をしています。
私は依頼者との打合中に電話がかかっても原則として取り次がないよう事務局に指示しています。しかし電話の内容如何によっては即時に対処すべきときがあり得ます。事務局が「重要性あり」と判断した場合、事務局はメモに電話主と用件を書いて私に渡します。私はお詫びをした上で相談者から見えない場所に行き電話に出ます。重要なのは電話後です。席に戻るや話しかけの話題に繋ぎます。一端切れた話がスムーズに流れます。自分にとってのタバコの箱です。