財政構造と家計の類推
複式簿記は取引内容を借方/貸方で認識します。資産が増大している裏では別の資産が減少しているか何かの負債が増大しています。経済社会では一方的に資産が計上されることはないし一方的に負債が増大することもないのです。貸借は必ず一致するはずですし誰かの資産は誰かの負債です。三橋貴明氏によれば09年6月末の日本のバランスシートは次のとおりです(単位兆円)。
資 産 負 債
政府 474.9 政府 979.0
金融機関 2727.5 金融機関 2737.2
非金融法人企業 796.1 非金融法人企業 1135.7
家計 1441.3 家計 376.4
民間非営利団体 53.5 民間非営利団体 18.3
(合計) 5493.3 (合計) 5245.8
純資産 247.5
政府負債はこれを引き受けている金融機関の資産であり金融機関の負債は家計部門の資産です。09年6月末の日本の対外資産は544.2兆円、対外負債は295.5兆円で、対外純資産が248.7兆円あります。政府負債979兆円にいかなる意味があるかは日本国の損益計算書と貸借対照表を照らし合わせないと分析できません。マクロ経済指標を個々の経済主体の類推で考えてはいけないという「合成の誤謬」はマクロ経済学の最も重要な命題です。ただし税収よりも国債発行額のほうが多い財政構造は異常です。議員も官僚も本格的な経済政策論議を重ねてほしいものです。国家の政策を考えるべき人たちが職務放棄をすれば困るのは子供たちの世代です。