親の意向と人生選択
山本圭一「悪い歯医者」(データハウス)は以下のように述べます。
医学部や歯学部に進学した学生の中で親の強い勧めに従った人は全体の8割を超えるのじゃないかと思います。そして、そうした学生のうち親が医師や歯科医師である割合は7割を超えるでしょう。そもそも医学部を志望するのは親から「医者になれば社会的な地位は保証されるし食うに困るようなことはまずない・だから医者になれ」と小さい頃から言われ続けた人です(略)医学部に入れば親が1目も2目も置いてくれる。大きい顔が出来る。(略)医学部・歯学部に入れば、それでもう1人前に扱ってもらえるんです・親って単純ですから。
親の意向で弁護士になった人は昔は極少数派でした。親が勧められる選択ではありませんでした。司法試験のハードルを越えられなかったときのデメリットがあまりにも大きかったからです。司法研修所入所直後の飲み会で私は民裁教官と次のような会話をした記憶があります。
私「研修所って法律家の2世3世が多いと思っていたんですが意外とそうでもないんですね?」教官「そうなんだよ」私「医者なんて2世3世が多いのに何故なんでしょ?」教官「そりゃ司法試験が公正な制度だからだよ・本人が頑張らないと駄目なんだよ」
当時の司法試験には正規ルートたる表街道という側面の他に社会的落ちこぼれが再起をかけて挑む裏街道という側面もありました。前者の場合は親の意向が働いた方も少なくないでしょう。が後者の場合多くの者は自分の選択で高いリスクに挑戦してきたのです。今後ロースクール制度が定着し金持ちの2世3世が正規ルートとして出世する表街道たる性格が固定化すれば親の意向で法曹を目指す人が増える気がします。ただ、そんな人は弁護士が意外と儲からないこと・社会的な地位が加速度的に低下していくことが判明すれば親の意向で法曹を目指さないようになるのでしょうね。