5者のコラム 「芸者」Vol.99

若者の欲望の対象ではなくなった

弁護士業が儲かるか?という問いに一般的に回答することは出来ない。弁護士は自由業であり人によって粗収入は全く違う。所得はここから必要な経費を差し引いた残りである。経費が毎月一定金額で発生するのに対し売上は変動幅が大きく赤字の月は心配になる。これは自由業の宿命だからどうということはないが世間の人が思っているほど、弁護士業は楽な商売ではない(芸者17)。
 これは08年にアップした文章ですが8年の経過により答えは明瞭になってきました。上記文は短期的な収支を意識して弁護士稼業が儲かるか否かを議論しています。この点は現在でも一般的に回答することは出来ません。が資格をとるためのコストと仕事を始めてからの収入の対比という長期的な観点で言えば「弁護士業務は儲からない」ということで議論は集約されるようになってきました。
 かつての法曹養成制度(旧司法試験制度)は極端な高倍率(50倍以上)の狭き門であったが故に受かってしまえば「ローコスト・ハイリターン」の制度でした。2年間国費で学べるとともに弁護士数の少なさによって1人あたりの仕事量が豊富にあったからです。が、現行制度は受かるのが簡単になった代わり「ハイコスト・ローリターン」の制度になりました。こんなバカな制度に有為の若者が<人生の貴重な時間>を費やせる筈はありません。
 法律事務所の運営は理屈抜きの算術。経費は毎月一定金額で発生しますが売上は変動幅が大きいものです。世間が思っているほど弁護士業は楽な商売ではありません。司法改革なる政治運動は稼いでいた弁護士へのジェラシーを主たるエネルギー源としていました。しかし既に弁護士業は妬みを生み出す職種ではなくなっています。優秀な若者の欲望の対象ではなくなってしまったのです。