5者のコラム 「5者」Vol.60

芸者的要素と対抗しうる価値

河野真樹氏はブログで次のように嘆いています。<先輩たちが驚くような若手の弁護士たちの話が伝わってきます。「依頼者に従順な弁護士が増えている」。こう書けば、あるいは市民のなかには、それのどこが悪いんだ、そんなことを先輩がことさらに思うこと自体これまでの弁護士が依頼者に対していかに威張っていたかが分かる、と考えてしまうかもしれません。しかしそういう話ではありません。依頼者の意を汲み取る弁護士が増えることが、さすがに先輩が驚くようなトンデモない話のわけはありません。また残念ながら逆にそういう正しい姿の若手弁護士が増えたと先輩方が称賛している話でもありません。これは端的にいって依頼者のおかしな主張に従順な弁護士ということです。つまり、どう考えても同業者からみて言い掛かりにしか見えない依頼者の主張をプロの法律家がそのままなぞっているという形なのです。(略)つまりは当該紛争での妥当な決着点・依頼者にとって現実的に最良の解決を認識すること、それに向かって依頼者を説得することの2つの能力が欠落しているととれるのです。(略)結果として共通しているのは、これはいうまでもなく当事者にとっても紛争の最良の解決にはならないということです。その意味では能力もさることながら、そうした基本的な弁護士としての意識が無いということもできます。弁護士の仕事はたとえ当事者に伝えにくいことでもきちっと伝え納得を得ることが重要な意味を持つものです。ただただ依頼者に従順であることは、その依頼者にとっても決して良いことではありません。そこは独立して判断する法律家の姿勢が求められるのです。>私は5者4で弁護士の芸者的要素と学者的要素を論じました。依頼者に従順すぎる弁護士は芸者的要素が肥大化しています。かかる弁護士は芸者的要素と対抗しうる別の弁護士価値が存在することを認識していません。かような弁護士の大量発生こそ司法の危機です。

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