自分に権限があることについて誠実に取り組む
NHK「100分で名著」は観たことがない。がテキストは結構持っている。「自省録」は学生時代に神谷美恵子訳で少し読んだ(岩波文庫)。「肉体に関する全ては流れであり霊魂に関する全ては夢であり煙である」と語るマルクス・アウレリウスは人間の条件を「絶えざる変化」だと喝破する。そして自らに起こることを「自分の権限内のものと権限外のもの」に峻別する。自分の意志では動かせない(権限外の)困難な出来事や変化は与えられた運命として愛せ:その上で自分の意志で動かせる(権限内の)ことにのみ誠実に取り組み自分の役割を果たすべきだ、と説く。
人間は時間とともに変化します。同一だと思っている身体も細胞レベルでは一定時間毎に入れ替わっており、精神に至っては実体をもたない夢か幻のようなもの。そのような移ろいゆく人生の時間を正しく享受するためには「権限内のものと権限外のもの」を明確に意識し、接し方を変える必要があります。出来事の中には自分の意志で何ともしようがない(動かせない)ことが多々あります。それは「権限外にある」と言わなければなりません。自分の努力などではどうしようもない。ならば「与えられた運命」として受け入れるほかはありません。愛せるかどうかは判りませんが付き合っていく他はないのです。他方、自分の意志で動かせることもあります。それは「権限内にある」ことです。これこそが誠実に取り組むべき対象です。難しいのは両者の区別が相対的なものであるが故に人生の時々で変化することです。ある時点で権限内でも別の時点では権限外になっていることがあります。なので、その時点・その時点に於いて「自分に何が出来るのか・何が出来ないのか」を意識しながら、その時点における<人生の意味>を考えるべきなのでしょうね。