芸者情報の可視化
遊郭の女性は様々なニーズを満たすことを求められました。当然のことながらニーズの多い素晴らしい女性(最高位が花魁)ほど花代は高くなります。需要側のニーズと供給者側の属性が合致したとき(市場の需給が一致したとき)取引が成立しますから、需給の場を仕切る業者は女性の属性に関する情報を公開しました。花魁の場合その美しさを誇る絵や素晴らしさを称える逸話が流布しました。そうでない女性の場合は通りから見える窓越しに本人を見せるシステムがありました。
市民のニーズは「良い弁護士を安く依頼したい」ということに尽きますが弁護士の専門性や能力を集約する作業には難しい側面があります。弁護士の主観的認識と客観的評価が合致している保証はありません。弁護士の善し悪しは依頼者との相性によって異なります。何をもって「良い弁護士」というのかは依頼者によって変わるのです。弁護士費用の定め方も事案毎に定まる極めて微妙なもの。同じ事案でも依頼者の方の状況によって費用の定め方を異にすることは珍しくありません。弁護士の能力や費用に関する情報を市民に「見える」ようにすることは言うは易しく行うは難しい作業の典型です。日弁連は「ひまわりサーチ」というウェブ上の弁護士情報提供サービスを開始しましたが、あくまで弁護士の自己評価にもとづくものです。弁護士費用は、弁護士報酬基準が公取委の勧告により廃止されて以降、かえって見えにくくなっています。弁護士と依頼者の出会いは男女の恋愛関係に似ています。よい相手を探そうとする努力が必ず報われる訳ではありません。情報が多ければ多いほど良い巡り会いがあるとは限りません。お見合いしか選択肢がなかった昔の方が男女の結婚率が高かったように、情報化の進展がマッチングを最適化する保証はありません。