5者のコラム 「医者」Vol.121
病棟診療と外来診療
前原哲博他編「帰してはいけない外来患者」(医学書院)の判りやすい説明です。以下「病棟診療」と「外来診療」の順番に記することとします。
①主な目的 治療>診断 診断>治療
②確定診断 ほとんどついている ついていない
③疾患の重症度 重傷が多い 軽傷が多い
④緊急性 高いことが多い 低いことが多いが一部救急例が存在
⑤器質・非器質疾患 ほぼ器質疾患 約半数は非器質疾患
⑥予想外事態への対処 すぐに可能 医療へのアクセスに時間が必要
⑦マネッジメント 医療専門職が治療 自宅の患者家族に委ねる
⑧診療時間 比較的時間がある 一般に短時間で間隔も長い
⑨診療の頻度 頻回に(毎日)可能 毎日行うのはほぼ不可能
著者は外来診療の極意を「忙しい外来で効率よく診断を絞り込んでいく・たとえ診断がつかなくても『帰してはいけない患者』を見落とさない」と要約しています。
法律相談は病棟診療ではなく外来診療です。主目的は完全な治療ではなくて暫定的な診断です。多くは軽傷の相談です。ほとんどは緊急性の低いものですが一部には緊急例があります。症状の多くは非器質(主観的な)愁訴です。アクセスに時間がかかることが多いですし事後の対処を本人や家族の観察行動に委ねることが多いものです。制約があるにせよ、法律相談で社会的な命を救われる人は確実に存在します。緊急例を見逃さないことが肝要と言えます。