法律相談の権利義務
私が弁護士になった頃に比べると法律相談の「権利・義務」は全く変わってしまいました。かつて市役所や法律相談センターの担当は公益的「義務」でした。市民が無料で利用できる市役所・法務局・社会福祉協議会等の相談担当はベテラン弁護士が好まないものであり、私はしばしば先輩弁護士から「代わってくれないか」と言われたものです。星野村や矢部村など、行くのに1時間以上かかる田舎の法律相談は相談者ゼロということが良くあります。その結果ベテラン弁護士がやる気を削がれていたようでした。新人として登録したばかりの私はこのような中で積極的に相談を担当しました。交代分を含めれば月に数回の相談担当があり、私はその中から受任可能な事件を見いだしてきました。当時の相談者は気が優しい純朴な方が多かったので若手弁護士には正義を担う気持ちで事件を受任する「権利」がありました。今から思えば、とてもやり甲斐のある幸運な日々でした。
現在、法律相談担当は「権利」の色彩を強めています。全体の事件数が減る一方で弁護士数が増えたため1人あたりの事件数が激減しているからです。近時の相談担当交代要請は弁護士会のMLで行われますが「法律相談を代わってくれませんか?」との書き込みがあると瞬時に「私が代わります」という若手弁護士の書き込みがなされます。筑後地区ですらそうなのです。大都市において法律相談を担当する「権利」の競争はもっと激しいのではないかと思われます。相談者の気質も変わりました。権利意識を肥大化させた人が増え弁護士に対して厳しい目線を向ける人が増えました。無料相談を何回も利用するクレーマーが目立ちます。相談者の属性も考えず「弁護士は市民のニーズに答えるべきだ」と放言する司法改革論者の主張も聞き飽きてきましたね。