5者のコラム 「芸者」Vol.101

法律的「行商」をするか?

年末になると思い出すのは中高生のときの行商体験です。近くの魚屋から雇われて年末の行商の手伝いをしました。トラックに大量の商品を載せ集落から集落へ出向きます。定点に着くと大声で叫び商いに来たことを知らせます。ぞろぞろ近隣の人がやってきます。値段は安くありませんでしたが結構売れていました。行商は物流の整備されていない田舎だから成り立つ商売かと思っていたのですが、東京都心でも行われているようです。業者が来てくれるのを待つ潜在的消費者の方は田舎か都会か関係なく存在するということなのでしょうね。
 日弁連は、司法改革による法律需要が伸びないことに業を煮やし「アウトリーチ」という言葉を盛んに使い始めました。市役所相談や法律相談センターは市民に対する法律のアウトリーチ的側面を有しています。行商みたいなものと言っても良いでしょう。なので市役所や法律相談センター等の相談担当という形の行商ならば私も協力はします。しかし、これらを超えて弁護士会から「アウトリーチ」を要請されても私が法律的行商をする気はありません。法律業務はなにもないところに出かけていって「ちわー・何か法的に困っていることはありませんかー?」と世間に媚びるような性質の仕事ではないからです。最近驚くのが関東の法律事務所が新聞の折込チラシ等を使って九州で「行商」を行っていることです。久留米も「僻地」とみなされているようで、市民会館などを用いて過払い事件を中心に集客しています。担当弁護士(おそらく事務所の若い弁護士)は「昨日は佐賀・今日は久留米・明日は大牟田」という感じで「どさ回り」をさせられているようです。こういう行商が成り立つのなら「都会の弁護士が来てくれるのを待つ僻地の潜在的相談者がまだまだ存在する」ということなのでしょうか?(私は恥ずかしくてとても出来ませんが。)

役者

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