5者のコラム 「役者」Vol.135

歌詞によるエッセイのようなもの(その4)

 「誰かに盗られるくらいなら貴方を殺して良いですか?」
 日本で摘発される殺人事件のうち半数以上は親族間殺人である。親族間殺人は日本の伝統的な犯罪類型であり今に始まった話ではない。親族なのに殺す?と読んではいけない。親族だから殺すのだ。愛情と殺意は紙一重である。殺意は極めて強い感情であり「反転した・屈折した愛情」であることが少なくない。ストーカーやテロリストにも複雑にねじ曲がった愛情が背景に存在するのだ。

 「1日1歩・3日で3歩。3歩進んで2歩下がる。」
 政治家や経営者には「前へ」と絶叫する方がいるが、人間常に前に進めるわけではない。後退する局面は必ず存在する。全体として前に進めていれば十分だ。前を向いていなければならないのは前進の局面であり、後退の局面では後ろを向いていなければ危険である。

  「毎日ゆかいに過ごす街角。僕は、僕は、帰れない。」
 どこで弁護士の仕事をするか?という決断をする際に私はほとんど先のことを考えていなかった。東京の仕事が愉快であるか否かは判らないが、実務修習が終わりになる頃に父が危篤に陥ったこともあり、何故か菩提心が生じて故郷近くの街で仕事を始めることにした。幸い私には自分を必要としてくれる良い仕事先があった。そういった御縁がなければ私は帰る決断を下せなかっただろう。