本人訴訟増加の意味
小林正啓弁護士はブログでこう述べます。
1月12日読売新聞夕刊は表題の見出しで「10年前に比べて弁護士の数が約1・8倍に増加したにもかかわらず当事者本人が弁護士をつけない『本人訴訟』が地裁の民事裁判に占める割合が14ポイントも増え73%に上っていることが明らかになった」と報じた。(略)しかしこの中には欠席判決(平成16年統計で18%)や期日が1回も開かれなかった場合(平成16年統計で8・6%)が含まれている可能性がある。さらに1期日ないし2期日で終了した裁判(平成16年統計で43・6%)の大半は請求認諾の事案と思われる。さらに4期日までで終了した12・9%の大半は事実に争いがなく和解に至った事案だろう。これらは何を意味するかというと被告が弁護士を依頼しなかった約55%のうち、おそらく大部分は被告に全く言い分のない訴訟なのだ。(略)われわれ弁護士はこの種の事件の被告から相談を受けたとき「弁護士を依頼してもお役に立てないし弁護士費用をどんなに安くしても明らかに費用倒れだからご自分で裁判所に行かれたらどうですか」とアドバイスすることが多い。
同感です。新聞報道の中に「恣意的なデータの意味付け」をして読者を間違った印象に導くものがあることは広く知られてきましたが、上記記事などその典型です。民事訴訟は債務名義をとる手段に過ぎないので、事実に争いがない場合には、代理人が付こうと付くまいと結論は一緒です。実質的に争いのある事件に関して言えば本人訴訟は確実に減っている印象があります(特に簡裁事件)。逆に法テラス(司法支援センター)が国費を使った宣伝広告をしたせいで、十分な資力の在りそうな方が「被告に言い分のない事件」でも扶助を使う傾向が生じている感覚がありますね。