5者のコラム 「役者」Vol.24

日常性を意識的に組み合わせて何度でも

平田オリザ氏は俳優に対しこう要求します(「演技と演出」講談社現代新書)。

①「日常の」動作をすること。日常演技が出来ない者に非日常的演技が出来るわけがありません。日常的動作を演じろと言われたら意外と出来ないものです。
②これを「意識的に」行うこと。無意識の行動は一般人も行っています。俳優は舞台の上で観客の視線や効果を意識しながら演じる必要があります。
③これを「自由に」「組み合わせて」行えること。演劇は多数の行為の組み合わせです。様々な行為を・順番を変えても・演じきれなければなりません。
④ 演出家の要求にあわせ何度でも「新鮮な気持ちで」演じること。初心者は練習をするほどダメになっていくことも多いそうです。

弁護士業務においても上記①ないし④は重要な要素です。
① 日常的な紛争が弁護士業務の80%以上を占めています。日常的事件に対する普通の対処すら出来ない者に非日常的な複雑な事件をさばけるわけがありません。
② 弁護士は法律行為に対して意識的になることが不可欠。他者の視線や与える効果を意識する。
③ 弁護士は多くの依頼者からの雑多な事件を同時並行的に処理しています。場面や順番を変えられても対処できなければなりません。慣れるまでは結構大変です。
④ 弁護士は漫然と(無意識に)仕事をしていてはいけない。対処方法を意識して組み立て回数を重ねる毎に精度を増すことが求められています。