敗者復活戦の意義
占い師の多くは平凡で退屈な小市民的生活から逸脱し波瀾万丈の人生を送っている方々です(露木まさひろ「占い師!」筑摩書房)。自身が「自分はどこで普通の人生から外れたのか?何の因果で自分はこうなったのか?」という「運」を強く意識し、占いに没頭して遂に占いを職業とした方が多いようです。全ての国や地域に占い師は存在しますが、多くは貧しい階層に属します。しかし閉塞状況に陥った日本は占い師が稼ぐには絶好の環境。平安時代と江戸末期に次ぐ占いブームの中にあるからです。とはいえ占いだけでメシが食っていけるのは運の良い才覚のある少数の成功者に限られます。その意味で人気のある占い師は敗者復活戦に勝利した方々と言えるのかもしれません。
昔の司法試験も敗者復活戦の側面を有していました。社会人になりきれない者たちが再起をかけて命がけの勝負をしていました。最初の論文試験を受けた時、私はベテラン受験生の方々が真夏の3日間に凄まじい気迫で戦っているのを間近に見て圧倒された記憶があります。敗者復活戦組は多くが弁護士志望者でした。敗者復活戦組にとって司法試験は「受かれば弁護士・落ちればプータロー」という戦いでした。が、司法試験が妙に明るい雰囲気に満ちていたのは点による選抜の形式的公平性が存在したからです。司法試験は受験までの経歴を問いませんでした。出題される問題の運に恵まれて合格しさえすれば弁護士としての生活が出来るという確かな希望があったのです。法曹養成制度改革に伴い合否は点ではなく線で決められるようになりました。運の要素が少なくなり受験者の経済状態が益々大きい要素を占めるようになりました。その結果、司法試験は敗者復活戦たる性格を喪失しました。弁護士になることが容易になった分、弁護士になった後の生活が商業的意味の運と才覚に依拠する傾向を強めています。その結果、商売人としての運や才覚のない弁護士はメシが食えなくなっていくのかなあと私は将来を占ってみたりするのでありました。