5者のコラム 「5者」Vol.74

投資家のリターンとリスク

 橘玲「週刊文春13/4/23号」の記述。

「絶対に儲かる」機会があるときに最悪のファイナンスは株式を発行して投資を募ることだ。会社法では会社の所有権は株主にある。第三者の株主に過半数を待たれてしまえば発明から得られる利益は彼らの自由にされてしまう。これでは何のために事業を始めるのか判らない。これとは逆に最良のファイナンスは全てを自己資金で賄うことだ。(略)何の蓄えも無い場合は親兄弟親戚などの身内から借金するのが次善の策となる。それでも足りなければ銀行に融資を頼みに行き、そこで断られたら商工ローンや消費者金融を利用する。(略)借金の魅力は金利を払って元本を返済すれば相手の権利が消滅することだ。本当に美味しい話なら見ず知らずの他人に分け与えたりせず独り占めするに決まっている。このことから「確実に儲かる話はあなたのところには絶対に来ない」という極めて単純な真理が導き出せる。それでは、どんな条件なら発明の権利の一部を他人に譲ろうとするのだろうか。それは儲かるかどうか自信が無く失敗したときの損失が取り返しの付かないほど大きいときだ。(略)このようにもともと投資家のところには危ない話しか来ないことになっている。

株式会社は株主にリスク分散させて個人資金では不可能な大冒険を許容するために設けられている制度です。これを国家として容認するのですから公営ギャンブル的な制度とも言えます。投資家のリターン(配当)はリスク(無価値化の危険)を取ったことの見返りです。リスク無しにリターンはありません。素人に「確実に儲かる投資の話」が来ることはありません。確実に儲かる投資話が本当に存在するのなら発案者は本人か親族か銀行あたりで資金調達出来ているはずだからです。それが出来ないからこそ「儲かる投資」という怪しい話が素人に拡散されているのです。理論的にも経験的にも素人に拡散される投資話はリスクが高いものです。騙されないようにしましょう。

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