5者のコラム 「5者」Vol.73

成功報酬とは何か?

成功報酬とは何なのでしょうか?植村修一「リスク・不確実性・そして想定外」(日経プレミアシリーズ)に以下の記述があります。

確率理論が発展して以来、計量的な手法を用いた予測が追求されてきましたが、20世紀に入り第1次世界大戦後、人類史上かつて無い惨禍を経験した後という時代の気分を反映してか、不確実性に関する議論が盛んになります。その代表がアメリカの経済学者フランク・ナイトです。彼は「リスク・不確実性・および利潤」(1921年)の中で不確定なことについて確率によって計測できるものと計測できないものに区別しました。確率によって計測できるものはさらにサイコロの目のように数学的に決まるもの(先験的確率)と実際に観察されるデータからきまるもの(統計的確率)に分けます。そして確率によって計測できるものをリスク、計測できないものを不確実性と呼びました。その上で不確実性のもとで意思決定する起業家への対価が利潤であるとしました。ジョン・メイナード・ケインズも確率法則が機能しない不確実性を重視しました。ケインズは「雇用・利子および貨幣の一般理論」(1936年)の中で不確実性という概念を使うことによって、家計が貯蓄と消費を分ける理由・貯蓄を流動性ある形で保有する理由・設備投資が変動したり金利に反応しなかったりする理由などを説明しました。

弁護士は事態が今後どう動くのか判らない中で事件を受任します。不確実性に満ちた状態の中での意思決定を求められるのです。思いもよらなかった事態が発生し苦境に立たされることも珍しいことではありません。法規範は過去のデータから導かれる統計的確率に近いものですが、シビアなケースでは過去のデータが通用しない事態すら出現します。弁護士の成功報酬は不確実性に満ちた事態の下で意思決定を行い、結果を出したことに対する弁護士への対価だと思われます。

学者

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