5者のコラム 「5者」Vol.63

弁護士と住宅ローン

池上彰「お金の学校」(朝日新書)に次の記述があります。

この住宅ローンは金額が大きいだけあって利用者にとってもリスクはあるわけですが、貸す側のリスクも高い。そのため他の自動車ローンなどに比べて審査が厳しくなっています。特にフリーランスに対しては物凄く厳しいですね。タレントさんなどは相当な売れっ子でもローンを組ませてもらえません。なぜかというと信用度が極めて低いからです。タレントさんであれば、今年は売れていても「来年売れる保証はあるんですか」というわけです。銀行としては一発屋さんでは困るんですね。だから一曲売れただけのバンドにしても女装タレントにしても、たとえ去年や今年の稼ぎが普通のサラリーマンより何倍も多かったとしても住宅ローンを組むのは難しい場合が多いのです。反対にある程度知名度の高い会社に勤めるサラリーマンであれば毎月の給料は低くても銀行は貸してくれる可能性が高い。(48頁)

昔は弁護士会と提携するローンを組む金融機関があり、これを利用すれば優遇金利により住宅ローンを組むことが出来ました。金利の高低は金融機関から見た融資対象の価値を意味していますから、普通の市民よりも優遇された低い金利が適用されるということは金融機関から見える弁護士の信用度が他の社会人よりも高かったということを意味します。しかし今後弁護士人口がますます増大して弁護士の窮状が進むならば、弁護士に対し普通の市民よりも優遇された金利が適用されることは夢物語となっていくでしょう。むしろ弁護士の本質的属性である「フリーランス」(来年に同じ所得を得る保証はない)が強調されていくなら、住宅ローンを組むことを拒否される場面も増えていくと予測されます。仮に今年の稼ぎがサラリーマンより多かったとしても来年同じ稼ぎがあるとは限らないのでローン金利が普通のサラリーマンより高く設定されることになるのかもしれません。嗚呼。

学者

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