建物区分所有法の立法論的考察
山岡淳一郎「狙われるマンション」(朝日新聞出版)に次の記述。
第1に小泉政権の不良債権処理策によって「建物の維持管理」を「建て替え」に強引に誘導する路線が導き入れられた。築30年超のマンションは「金のなる木」。各戸2000万円で建て替えれば20兆円の市場規模となる。しかしマンション住民の5分の4が賛成しても「修繕費が高額」であることを楯に建て替えは拒否できるはずだった。法制審に規制改革会議から乗り込み、この「楯」を取り払ったのが森ビル社長と規制緩和派学者。かくしてスクラップ&ビルドが日本の住宅政策となった。第2に管理組合の運営をめぐり対立が生じ住民が理事会への参加を面倒として管理業務を管理会社に丸投げするケースが目立っている。掃除や給排水・植栽の世話からエレベーターの保守までマンションの共有部分の維持管理費用も巨額に上り管理会社が預かる結果横領持ち逃げ等の不祥事が頻発している。第3にそもそも日本では住宅ローンがリコース型で支払いが滞り担保を処分しても借金が残る方式となっている。年収の10倍もの融資を行うわけだが、生命保険への加入も勧められるためローン破綻が自殺を誘発する原因となっている。米国等で担保を差し出せば借金が消えるノンリコース型となっているのとは対照的に「地獄までローンがついてくる」のである。
山岡氏が叙述の核にするのは”建物の老朽化”と”住民の高齢化”という「ふたつの老い」の進行。建物の老朽化はこれを「金のなる木」と考える建築業者の恰好の標的となり、住民の高齢化はマンション管理を「金のなる木」と考える不動産業者の恰好の標的となっています。建物区分所有法について解釈論ばかりではなく立法論的観点からも検証していく必要があると私は感じます。