医療崩壊論と被害者救済
読売新聞(3月6日)に以下の記述があります。
医療事故の被害者や支援者への個人攻撃・品位のない中傷・カルテの無断転載など、インターネット上で発信する医師たちの“暴走”が目立ち、遺族が精神的な二次被害を受ける例も相次いでいる。状況を憂慮した日本医師会(日医)の生命倫理懇談会(座長、高久史麿・日本医学会会長)は2月、こうしたネット上の加害行為を「専門職として不適切だ」と、強く戒める報告書をまとめた。(略)2006年に奈良県の妊婦が19病院に転院を断られた末、搬送先で死亡した問題ではカルテの内容が医師専用掲示板に勝手に書き込まれ医師らの公開ブログにも転載された。警察が捜査を始めると、書いた医師が遺族に謝罪した。同じ掲示板に「脳出血を生じた母体も助かって当然、と思っている夫に妻を妊娠させる資格はない」と投稿した横浜市の医師は侮辱罪で略式命令を受けた。同じ年に産婦人科医が逮捕された福島県立大野病院の出産事故(無罪確定)では遺族の自宅を調べるよう呼びかける書き込みや、「2人目はだめだと言われていたのに産んだ」と亡くなった妊婦を非難する言葉が掲示板やブログに出た。割りばしがのどに刺さって男児が死亡した事故では診察した東京・杏林大病院の医師の無罪が08年に確定した後、「医療崩壊を招いた死神ファミリー」「被害者面して医師を恐喝、ついでに責任転嫁しようと騒いだ」などと両親を非難する書き込みが相次いだ。
患者側代理人による調査検討の不十分によって医師が訴訟に巻き込まれるケースがあることを私は知っています。たしかに見識のない患者側代理人の行動により誠意ある医師が傷つくのは正義に反します。しかし医療崩壊論が1人歩きして真に救済されるべき事案が闇に葬られることも正義に反します。かような事案で救済を求める患者の行為をモンスターというのは筋違いです。