5者のコラム 「医者」Vol.110
医師患者間コミュニケーションの特徴
尾藤誠司医師は「医師アタマ」(医学書院)において次の指摘をされています。
1 医師という職業は一般的意味でのサービス業(顧客が自覚する要望に対応し顧客満足度を高めるタイプの職業)とは少々合致しない性質を持っている。
2 医師は自ら提供するサービスについて金銭に関する交渉をほとんど行わなくて良いほど大きく任されている(国民皆保険制度をとっているため。)
3 医師は歴史的に社会的ステータスが高い存在として認知されてきた(そのため相手から直接的批判を受ける機会が他の職種に比べて少ない)。
4 医師と患者間のコミュニケーション破綻はしばしば重大な不幸を作り出す。
上記記述は弁護士・依頼者間のコミュニケーションに有益な示唆を与えます。
1 弁護士業は一般のサービス業と合致しない性質を持っています。しかし司法改革後は顧客の要望に対応し顧客満足度を高める動きが顕著になっています。
2 弁護士の国民皆保険制度は存在しません。国家的価格統制が進めば弁護士の金銭交渉の機会は更に少なくなります。金銭交渉は弁護士がブラックジャックのように国家から自由である象徴です。
3 弁護士は社会的ステータスが高い存在として認知されましたが、弁護士人口増大・質の低下および不祥事多発などにより弁護士への依頼者目線の硬化が目立っています。
4 弁護士と依頼者間のコミュニケーション「破綻」は双方に重大な不幸を作り出します。ゆえにこれを未然に「防止」するための工夫を重ねることが大切です。