5者のコラム 「医者」Vol.63

労働者の精神的不調への対処

<事案>某会社(Y)の従業員(X)は加害者集団から嫌がらせを受けているという理由で有給休暇を取得し出勤しなくなった。Xのいう嫌がらせとはメイド喫茶のウエイトレスとの間でトラブルになり約3年間にわたり加害者集団が雇った者から日常生活を看視されるようになった・加害者集団はXに「だから空気に魔法は通じねえんだよ」など威迫しているというもの。Xは上司に対し「ストーカーの件で頭に来たので警察に行ってきます・しばらく休みます」とメール送信した。Xは有給休暇を全て取得した後、約40日間欠勤した。Xは有給休暇の残りが少なくなったとき休職特例を認めてもらいたいと依頼したがYは許可しなかった。Xは本部労務担当者に被害について電話相談し同僚らの会話を録音したレコーダーの資料を送付した。Yは就業規則所定の「正当な理由のない無断欠勤があった」との理由で諭旨退職とした。Xは本件懲戒処分は無効であると主張し雇用契約上の地位の確認を求めて提訴した。<1審> X主張の事実は認められない。Xの欠勤に正当な理由は認められない。Yの処分は社会的相当性を逸脱するものではなく有効。Xの請求を棄却。<高裁> Xが欠勤したのは被害妄想等の精神疾患によるもの。Xは適宜上司に欠勤する旨を伝えている。これを無断欠勤として扱うのは相当ではない。Xの請求を認容。 <最高裁> 精神的不調のため欠勤を続けていると認められる労働者は精神的不調が解消されない限り出勤しないことが予想されるところであるから、使用者であるYは欠勤の原因が上記の通りである以上、精神科医による健康診断を実施するなどしてその診断結果等に応じ、必要な場合は治療を勧めた上で休職等の処分を検討し経過を見る等の対応を取るべきである。Yの処置は精神的不調を抱える労働者に対する使用者の対応として適切なものとは言いがたい。上告棄却(最判平成24年4月27日・判タ1376号)。

5者

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