5者のコラム 「医者」Vol.27

個人の問題か社会環境の問題か

 岡田尊司「アベンジャー型犯罪」(文春新書)の記述。

今この日本で起きていることを捉えようとするとき、しばしば議論が混乱してしまいやすいのは個人の問題と社会の問題のどちらに焦点を当てるかによって問題の見え方が大きく違ってくるということである。ときには原因は個人の問題にあるという議論と社会環境の問題にあるという議論が対立してしまうこともある。

G.B.ヴォルド「犯罪学・理論的考察」(東京大学出版会)は以下の構成です。
第1部 背景-伝統的な犯罪学派
  第1章 序説 第2章 古典主義と新古典主義 第3章 実証学派
第2部 個人の特異性とか異常性に重点を置いた学説
  第4章 体型説(人相学と骨相学)  第5章 メンタルテストと「精神薄弱説」
  第6章 遺伝と欠陥についての仮説(一種の欠陥病としての犯罪)
  第7章 学説の方向付けとしての精神病質(精神医学との関係)
  第8章 人格問題のタイプとより適切な理論(酩酊・浮浪・売春・麻薬など)
第3部 集団とか文化の影響に重点をいた学説
  第9章  経済状態と犯罪性  第10章 学習された行動としての犯罪
  第11章 犯罪の説明としての集団衝突説(政治的な性格)
  第12章 利潤と勢力を求めての犯罪人の組織(暴力団・やくざ・汚職等)
  第13章 ホワイトカラーの犯罪(社会的名士による違法行為)
 政府が「個人の問題」としていることは「社会環境の問題」のすり替えかえもしれません。犯罪者が「社会環境の問題」としていることは「個人の問題」のすり替えなのかもしれません。