似ているものは同じ力を持つ
石井ゆかり他「星占いのしくみ」(平凡社新書)に次の記述があります。<形が似ていたり期間が一致したりタイミングが噛み合ったりするとき人はそこに無意識のうちに「つながり」を見いだします。類似しているものや接しているものをネットワーク化して意味づけし、そこから世界の解釈が生まれるわけです。似ているものは同じ世界のものである。だから、似ているものは同じ力を持っている。これが人間の原初的世界観の大前提です。似ているものは同じ力を持っているという考え方は、すなわち「象徴」の思考です。たとえば人は仏像やロザリオなど聖なるものの似姿を作ってそれを拝みます。これらは姿を似せればそれは神様や仏様と同じような力を持つという考えに端を発します。
この点について哲学者ミシェル・フーコーはこう述べています。
16世紀末までの西欧文化においては類似というものが知を構築する役割を演じてきた。テクストの釈義や解釈の大半を方向付けていたのも類似なら、象徴の働きを組織化し目に見えるもの・目に見えぬものの認識を可能にし、それらを表象する技術の指針となっていたのも、やはり類似である。(中略)大地は空を写し、人の顔が星に反映し、草はその茎の中に人間に役立つ秘密を宿していた。(「言葉と物」新潮社42頁)
法律家は初めて遭遇する事態に対し過去の事例で似ているものを探し既存の法体系との整合性を図りながら法規範を拡張します。法律家は事例を「似ている」もの同士で分類し、この分類により世界の規範的秩序を酌み取るのです。この思考様式は人間の原初的世界観と同じ。「似ているものは同じ力を持つ」という思考です。法律家的思考は易者的思考と「似ている」と思いませんか?