5者のコラム 「医者」Vol.158

主訴・要望・希望

藤野雄次編「そのとき理学療法士はこう考える」(医学書院)の記述。

「主訴(chief complaint)CC」は疾病や障害に関する対象者の主な訴えのことで、現在最も困っていることや苦痛に感じていることを対象者のことばで表現してもらったものである。基本的に「主訴」は理学療法初回評価で聴取する。そのほかに理学療法士が得るべき情報として対象者本人が主観的に要求するものである「要望(Demand)」や「希望(Hope)」がある。そして理学療法評価の結果を統合解釈した上で対象者にとって客観的に必要と判断される「ニード(Need)」を把握する。Needは患者像を理解し、治療効果や理学療法介入効果も踏まえて決定されるため、妥当で実現可能な内容にしなければならない。

法律相談における「主訴(chief complaint)」は社会生活において相談者が抱えている主たる訴えのことです。現在、最も困っていることや苦痛に感じていることを相談者の言葉でそのまま正直に表現してもらったものです。本人の言い分を素直に聞きます。最初から話しを遮ると相談者には不満がたまるからです。次に弁護士は受任可能性に繋げられるか否かを見極めるために相談者が言及する「要望(Demand)」や「希望(Hope)」を聞き取ります。それが「法律の解釈適用により実現可能」と弁護士が評価したときに要望や希望が客観性を帯びます。このとき相談者は依頼者に変化します。即ち、弁護士実務における「ニード(Need)」になるのです。Needは弁護士介入効果を踏まえて決定されるため、妥当で実現可能な内容にしなければなりません。そこには当然「費用(Cost)」の問題がついてまわります。「時間(Time)」も大事な要素となりましょう。こういう一連の流れを瞬時に認識できるようになったときにヒヨッコ弁護士は「独り立ち」が出来るのでしょうね。