「聞く」と「聴く」
財団法人メンタルケア協会「人の話を『聴く』技術」(宝島社)に以下の記述があります。
「聞く」は英語で言えば「hear」。耳に入ってくる情報を感じる状態です。人の話も雑音も同じ。耳に入っている音でも意識しなければ聞こえてきません。目の前に話し手がいてもその話に興味が持てないと言葉が入ってこない状態になります。一方「聴く」というのは英語で言えば「listen」。もっと積極的な気持ちで相手が話している言葉を理解しようとする行為です。文字通り耳を傾ける「傾聴」という態度を示すことにもなり相手も「この人は私の話を真剣に聴いてくれている」と思ってくれるようになります。(略)ふつう私たちが日常で会話するときにはその言葉に2種類のメッセージが込められています。「意味情報」と「感情情報」と呼ばれているものです。(略)話し手はメッセージを発するとき実はそのメッセージの裏側に隠された感情こそ伝えたいと思っているのです。(略)話し手の心が満たされるのは「意味情報」と「感情情報」の両方が伝わったときなのです。それが十分に出来たとき話しては聴き手に対して「私のことを判ってくれた」と実感して聞き手に信頼を寄せてきます。ビジネスの現場では「意味情報」がその大半を占めることはやむを得ないところがありますが私たちが日常にする会話では「感情情報」のほうに重きを置くべきです。
弁護士が相談者の話を「聴く」ためには発語の意味を積極的に理解する努力が必要です。文字通り<耳を傾ける>態度を示す必要があります。そうすれば相談者は「私の話を真剣に聴いてくれている」と思い信頼を寄せてくれるようになります。法律臨床の見地(要件事実の観点)から「意味情報」が重視されるのは当然ですが、相談者が語る言葉には「感情情報」も多く含まれているからです。相談者と良い人間関係を形成するためには表面的メッセージの裏側に隠された「感情情報」を尊重し・受け止める・弁護士側の心がけが不可欠なのです。