5者のコラム 「易者」Vol.22

私を消す物語と私探しの物語

 鈴木淳史「占いの力」(洋泉社新書y)は占いの物語を以下のように説明します。
1 私を消す物語(細やかなアドバイスによって世界観を無意識のままに植え付け、自分がどのように生きるかを示してくれる一般的に極めて受け入れやすい物語。多くの女性はこの「私を消す物語」を適当に受容して余り深く考えることなく社会に溶けこんでいくように見える。)
2 私探しの物語(ある出来事が怖いのは、それが自分にとってどんな意味があるかわからないからである。それを物語という器に放り込んでみる。すると、これらの出来事に意味が与えられ、これがいったいナニモノであるかと悩む必要がなくなってしまう。(中略)「私を消す物語」と違って、自分と自分の人生に意味を与えてくれる「物語作用」を求めるのだ)。
 占い師はまず一般的抽象的な話をします。その話が描き出す世界が良いものであることを相談者に受け入れさせます。次いで占い師はその世界から相談者に対して与えられる意味を説いていきます。これにより相談者は自分は何者か・この世界はいかなるものかという意味を補充されるのです。占いとは世界の解釈とその適用に他なりません。法律相談は同じ構造です。個別具体的な相談は抽象化され、法規範的思考(権利義務関係)に変換されます。そこに個性は存在しません。次にその規範に照らした当該事件の意味が語られます。「Aの場合にはBをすることが出来る」という命題で形成される法規範に照らし当該相談者にとっての事実たるAが示され・なし得ることとしてのBが示されるのです。相談者に対しどんな「物語」を提示するかは弁護士によって違いがあります。弁護士により選択する法規範が違うことがありますし、単純明快な「私を消す物語」が示せないことも多いのです。法の適用に関しても、相談者の抱える諸事実の中のどの事実に焦点を当てるかは弁護士の個性により違うことがあります。「私探しの物語」も簡単ではありません。