法律相談の技術を言語化する
亀岡信悟監修「臨床基本手技実戦マニュアル」(南江堂)は新人外科医が修得すべき基本手技を明瞭な写真と詳細な説明文で示しています。基礎的手技(消毒法・縫合法・止血法・切開排膿法等)救急処置(気道確保・心臓マッサージ・電気的除細動等)麻酔法(局所麻酔・硬膜外麻酔等)採血法(静脈・動脈・血管確保・中心静脈穿刺等)などです。修得過程では他人の手技を観察し、あるいは自分の手技を批評してもらう機会も多いことでしょう。
「現代のエスプリ415号・21世紀の法律相談」に以下の記述があります。
この弁護修習期間は修習指導担当弁護士と行動を共にし弁護士の仕事の仕方を身をもって体験する。もちろん指導担当弁護士の法律相談の現場に立ち会うことも出来るし、これが原則である。そして弁護士が法律相談現場を見る機会はただこれだけというのがこれまでの実態であった。しかし、この指導担当弁護士も、かつて修習生だった頃に指導してくれた担当弁護士の法律相談の現場を垣間見たことがあっただけであり、特別な訓練を受けたことはない。つまり一種徒弟制度のようなことが旧態依然として行われてきたが、それもたった3・4か月という短期間、垣間見るだけである。(中略)では弁護士はいったいどこで法律相談の技術を身につけているのだろうか?答えは自分自身の会話術を自分自身の判断で日々磨いているということになる。自分自身のというのは弁護士は決して他の弁護士の法律相談を見る機会が与えられないし、他人に見てもらって批評してもらう機会もないからである。(中略)他の弁護士がどのような法律相談をしているのか、そもそも本人以外には知りようがないので比較の方法すらないというのが正直なところである。
法律相談の技術は定型化に馴染まない職人芸と思われてきました。しかしながら今後は法律相談の技術にも光をあてて「外部に開いていく」必要性が高くなっていきます。たしかに「技術の言語化」には困難が伴います。けれども法律実務の変容に従って時代が要請しているのです。