悪魔払いとしてのオヤジギャグ
村上春樹さんは河合隼雄先生(ユング派精神分析家)がよく口にしていたオヤジギャグを「悪魔祓い」だったと表現しています(「職業としての小説家」スイッチ・パブリッシング303頁)。
河合先生は臨床家としてクライアントと向かい合うことで、魂の奥の暗い奥底まで、その人と一緒に降りていきます。それは往々にして危険を伴う作業になります。(略)そのような場所で糸くずのようにべったりと絡みついてくる、負の気配・悪の気配を振り払うためには出来るだけくだらない・ナンセンスな・駄洒落を口にしないわけにはいかなかった。
「悪魔祓い」と言えば、オカルト映画の古典「エクソシスト」(1973)が著名です。
女優のクリスは映画撮影のためワシントンに滞在していたが、1人娘リーガンの異変に気付いた。その声は邪悪な響きを帯び形相も怪異なものに豹変したうえ荒々しい言動は日を追って激しくなり、ついに医者からも見放される。その矢先、友人のバーク監督がクリス宅で殺害される事件が発生し、キンダーマン警部補が捜査に乗り出す。悪魔はリーガンに十字架で自慰行為をさせ、バークの声を使ってクリスを嘲笑する。娘が悪霊に取り憑かれたと知ったクリスはカラス神父に悪魔払いを依頼する。悪魔憑きに否定的なカラスは調査を進めていくうちにリーガン自身からの救済メッセージを発見する。カラスは悪魔払いの儀式を決意し、大司教に許可を依頼する。儀式主任には悪魔払いの経験があるメリン神父が選ばれた。2人の神父はリーガンから悪霊を追い払うための壮絶な戦いに挑む。
キリストによる悪魔祓いは福音書にも記述されています。異端ではないようです。映画でも神父は「キリストの名において汝を滅ぼす」と宣言します。私もオヤジギャグを連発するときがあります。それは絡みついてくる「負の気配・悪の気配」を振り払う<悪魔祓い>だったのでしょうか?