5者のコラム 「芸者」Vol.149

変な感じと寄り添う気持ち

 花房ゆい「遊郭へ・女子ひとりで街歩き」(柏書房)に以下の記述があります。 

遊郭巡りを始めてまだ間がない頃、母にこんなことを言われました。「ゆいちゃんみたいな若くて自由な子が遊郭跡なんかを歩いて、うらやましがった遊女の霊に取り憑かれたりしないかな、心配。」幸か不幸か、わたしには霊感が全く無いので仮に取り憑かれたとしても気づかないかもしれません。そんな心持ちなので自分自身では心配していませんが、遊郭跡を歩くときには、そこにいた女性達へ寄り添うような気持ちでいつもいたいと思っています。

 法曹実務家として特殊な場所に赴くたびに「何か場違いな感じ」を常々感じてきました。特に初期段階はそうでした。さすがに30年近く仕事場にしている裁判所への違和感は無くなってきましたが、独特なコトバや作法に何らかの「変な感じ」を抱くことが未だあります。裁判所以外では警察・拘置所・不動産業者・法務局・銀行(特別な部屋)証券会社・病院(特に精神科の病院)老健施設・市役所(特別な部屋)大学(特別な部屋)などに出向いてその場特有の「変な感じ」に違和感を感じることが未だあります。霊感が全く無い人間なので「地縛霊のようなものに取り憑かれたような感覚」はありませんが、その場所で多くの人が生き・喜び・苦しみ・死んでいった何かの気配を感じて「自分がそこに居ること」に違和感(かたじけなさ)を感じてしまいます。何か場に馴染めない。けれども私は職業人としてそこに居る。何らかの役割を持って、そこに居る。そのときに意識するのは、かつてその場所に居たであろう人・あるいは現にその場所に居る人に「寄り添うような」気持ちを持ち続けていたいということです。「変な感じ」と「寄り添うような気持ち」が両立するの?といぶかしがる方がいるかもしれませんが、不思議なことに私の中では両立します。

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