5者のコラム 「5者」Vol.19

国選弁護人の役割

 国選弁護人がどんな気持ちで遂行しているのか世間は気にもかけません。こんなやつの弁護を引き受ける弁護士の気が知れないと罵倒する人もいます。被告人は資格を有する弁護人に弁護をしてもらう権利を保障されています。だから国が弁護人を付するのです。憲法が定めるこれらの規定は弁護人不在の刑事法廷で人権侵害が行われた歴史に鑑み設けられているものです。
 弁解の余地が無いと思われる凶悪事件の弁護を好んで行いたいと思う人は多くありません。弁護士個人の感情で言えば誰も弁護しないという事態が生じてもおかしくありません。が弁護士会という組織として言えば弁護の引き受け手がないという事態はゆゆしきこと。被告人の弁護人依頼権に対応する組織的責務を弁護士会が負っているからです。マクロ経済学で言う「合成の誤謬」は国選事件に関しても妥当します。いかなる事件も弁護士会の誰かが弁護人を引き受けなければなりません。
 国選弁護人は芸者ではなく学者。その被告人のため立論をするのが使命です。被害者の気持ちを代弁して論じるのは検察官の役割であり弁護人の役割ではありません。世間の空気を気にして被告人の立場からの弁護活動が出来ないのであれば弁護人としての役割放棄です。かような弁護活動は懲戒の対象となることすらあります。刑事事件の劇場化が進む中で弁護人に対するバッシングが激しくなっています。被害者と弁護人を「バトル」する構図を作り上げて消費するマスコミ関係者の編集がこれを裏打ちしています。かかる空気を嫌って刑事国選弁護人から離脱するベテラン弁護士も少なくありません。弁護士会執行部や刑事弁護委員長はつらい立場におかれています。誰もがやりたがらない刑事国選事件を、かかる立場の方々が責任感で引き受けているケースも多いのです。

前の記事

新法理と知的財産権

次の記事

犯罪報道の問題点