5者のコラム 「医者」Vol.5

勝ち組と負け組の二極化

「業界」としての医者の世界と弁護士の世界には似たような面が多数あります。狭き門をくぐった者に対して与えられた豊かな生活。その豊かな者の集まりである業界団体(医師会と弁護士会)。それなりの繁栄を享受してきた二つの業界に対して強い政治的圧力がかかり、将来に深刻な不安が生じているところはそっくりです。この国の中央官僚が日本の医療をどういう方向に持って行こうとしているのか私には全く見当がつきませんが、巨大になりすぎた国民医療費を削減するために、これまで以上の医療資源の効率化と医師間の競争激化を促していることは容易に見て取れます。次のような記述を読むと「明日は我が身」という感じを抱かざるを得ません。

「病院を逃げ出した医師たちは開業に走り、地域で患者の取り合いが始まっている。今後、開業医の競争が激化し、勝ち組と負け組が二分化して、負け組の医師たちはやがて失業するだろう。良い医療が優遇されれば医師は水が低きに流れるごとく良い医療に向かう。しかし、今良い医療を行おうとすれば医師の私生活が破壊されかねない状況になっている。それに気づいた若い医師たちは雪崩を打って個人主義に走り出した。苦しい勤務から逃げ医療訴訟のリスクの高い科を避け、過疎地を離れ、患者を置き去りにしていく。」(久坂部羊「大学病院のウラは墓場」幻冬舎新書212頁)。

 弁護士業界でも依頼者の取り合いが始まっています。 勝ち組と負け組の二分化も始まっています。弁護士会に背を向けた若手は「無関心」を通り越して「もう弁護士会は要らない」とすら明言しています。 大都市のみならず地方都市でもこういった雰囲気が感じられるようになりました。福岡市の地下鉄にも東京の法律事務所の広告が載っています。テレビCMを仕掛ける事務所すら出てきました。そのうち「法律事務所のウラも墓場」と言われるようになるのでしょうか?

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