5者のコラム 「医者」Vol.84

他人の失敗から学ぶ

 半田宏医師は「あっ、患者が死んじゃった」(データハウス)でこう述べます。

一般の事業においても成功者が論ずるのはよく見られるが失敗談は多くは語られない。しかし本当に勉強になるのは失敗の経験ではないだろうか。失敗から学ぶ反面教師は実は医療の現場でも役に立っているのだ。これまでの自分の経験を振り返ってみても病人を治療し全快させ元気に退院してゆく姿は毎日のように見ているのだが、あまり覚えていないのである。ところが臨床で失敗した患者の顔は一生忘れられない心の傷となって生涯に渡って残ってしまう。それは医療ミス誤診こそ実は医師にとっては最も重要で検討されなければならないことを自分自身が証明していることになるのではないか。(略)私は臨床医の立場でこの本をまとめたが、これがきっかけとなって医学界の権威者からそれこそ勇気ある”誤診学”が生まれるならば日本の医療の進歩につながると思う。

 法律業界においてマニュアルは多数出版されています。飲み会においても先輩は嬉々として成功事例を語ります。しかし事業の世界に於いて先行者の猿真似に過ぎない人が成功しないのと同様、成功例を聞くだけでは若手の役に立ちません。失敗談を聞くことのほうが若手にとって遙かに勉強になります。成功話はホラや偶然がふくまれていることが多いのに対し失敗話の多くは「リアルで必然的なもの」だからです。反面教師こそ実務の現場で役に立ちます。「いかにすれば成功するか」を学ぶことよりも「いかにすれば失敗するか」を学び・それを避ける手立てを実践的に考えることのほうが大成への近道だと私は考えます。近時「弁護士の失敗学」(東弁協叢書)というテキストが出版されました。弁護士実務の中で陥りやすい失敗を検討した良書です。

次の記事

学習を促す言葉(18本)