5者のコラム 「易者」Vol.28

事件番号の管理

 小松英雄氏は「いろは歌・日本語史へのいざない」(講談社学術文庫)において仮名字母表の役割は(五十音図ではなく)伝統的に「いろは」が担ってきたと述べます(18頁)。<色は匂へど 散りぬるを  我が世 誰そ常ならむ 有為の奥山 今日超えて  浅き夢見し 酔ひもせず>山口謡司氏は「日本語の奇跡<アイウエオ>と<いろは>の発明」(新潮新書)で次のように説明します。「匂ふ」は視覚的に映ることを意味し嗅覚的意味はない。「我が世・誰そ常ならむ」とは「私の生きているこの世で誰が一定不変であろうか?(誰も不変ではない)」の意味。「有為の奥山今日超えて」とは万物は何らかの原因で世に存在しているという仏教的世界観。「浅き夢見し酔ひもせず」とは「はかない夢など見るまいよ・酔っているわけでもないのに」という意味。小松氏は、この歌が「諸行無常・是生滅法・生滅々己・寂滅為楽」という仏教の精神を表現したものと解しています。
 裁判所の事件番号は上記いろは歌により管理されています。
1 簡易裁判所
民事 イ(和解事件)ロ(督促事件)ハ(通常訴訟)ニ(再審)ホ(過料事件)
刑事 い(略式事件)ろ(公判請求)は(証人尋問)に(証拠保全)ほ(再審)
2 地方裁判所
民事 ワ(通常事件)カ(再審事件)ヨ(保全事件)タ(人事事件)レ(控訴事件)
刑事 わ(公判請求事件)か(証人尋問)よ(証拠保全)た(再審請求)
3 高等裁判所
民事 ツ(上告事件)ネ(控訴事件)ナ(担保権実行)ラ(抗告事件)ム(再審) 
刑事 う(控訴事件)ゐ(欠番)の(第1審事件)お(再審)く(抗告事件)
 不本意な判決に「浅き夢見し酔ひもせず」と嘆きたくなることがありますね。