モテテクの2つの方向性
鈴木由加里氏は「『モテ』の構造」(平凡社新書)でこう述べます。
この本を書くために「モテ」とか「恋愛」というタイトルの付いている本を死ぬほど読んだ。(略) インターネット通販の怪しげな「モテテク」はともかく私が読んだ「モテテク本」には2つの方向性があるということが判った。ひたすら自分磨きに向かうのか、徹底的に他者のニーズに応じることを追求していくかである。(略)両者は似ているので見分けがつきにくい。しかし順番が違うのである。 まず「自分磨き」があって、その結果「モテ」て恋愛で成功するということと最初から「モテる」ために自分磨きをするということではやるべき努力が違ってくるのである。「モテる」ことを第1目的とする場合には愛してもらう相手の趣味をとことん考えて相手が抱いている理想の恋人像を演じるための情報を提供する。これに力点を置いている雑誌は女性誌に多いように思う。(186頁)。
弁護士業界も「モテテク」を追求するために分化しつつあります。 第1はひたすら自分磨きに向かう流れです。専門領域を確立し、他人の追随を許さない職人芸を磨くタイプです(医療過誤・建築訴訟・企業倒産・知的財産権等)。第2は徹底して他者のニーズに応じることを追求する流れです。誰でも出来る事件に特化し、多くの事務員に定型的業務を任せるビジネス事務所がこのタイプです。両者に共通するのは精緻な広報戦略の必要性です。前者はロングテールを追求することになるので、広域で仕事を得なければやっていけません。後者は大規模に広告を打って出なければ成り立ちません。いずれも都市型モデルなのです。これまで田舎弁護士は都市型モデルと無縁でした。良い縁談がお膳立てされることを期待する「お見合い」型の顧客対応をしてきたと言えます。かかる田舎の弁護士業務が都市化の波で破壊されつつあります。それが「司法改革」の実像なのです。