5者のコラム 「学者」Vol.152

プロ棋士型・プロゴルファー型

 羽生善治九段が神田眞人氏(金融庁参事官)との対談で次の問題意識を示しています(「ファイナンス」2017年3月号)。

神田 21歳までに初段・26歳までに四段になれないと奨励会が退会となる制度について羽生さんはどのようにお考えですか。 羽生 この制度がいちばん良いのかというのは判断が難しい所はあるのです。(略)ただ棋士の世界もあまり人数を増やせないという事情もあるので、ある程度人数に制限をかける必要はあるのかなと思っています。切磋琢磨していく環境から若い人たちが頭角を現す面もあるので、ある程度厳しい制度は必要不可欠かなと思います。将棋界の場合は四段になってプロになればある程度保証されている世界なので、例えばゴルフのように「プロライセンスを取ったとしても生活できるかどうかは別」という世界より「プロになれれば保証されるけれども、なるまでがちょっと大変」というスタンスです。

 私の頃の法曹養成制度は「プロ棋士型」。司法試験合格者が司法研修所の収容能力に合わせて制限されていたためプロになる人自体が少なかったのですね。「プロになれれば保証されるけれども・なるまでちょっと大変」という感じでした。600人枠に3万人の受験生が集まっていましたから競争率が50倍もあったんですね。まあ「保証」といっても修習期間中の給与が出るとか・弁護士になった後の仕事が若干多いという程度ですが、それでも合格した後の安心感はありました。これに対し現在の法曹養成制度は「プロゴルファー型」になっています。「プロのライセンスを取ったとしても生活できるかどうかは別」という世界です。切磋琢磨していく環境から若い人たちが頭角を現すという面もありますので、どちらが良いのかは悩ましい所なのですが、リアルな法曹界の世相を観ている限り、近頃は「プロゴルファー型の弊害」が出始めているように私は感じております。

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