5者のコラム 「芸者」Vol.157

サービス業である・サービス業でない

北条かや「キャバ嬢の社会学」(星海社新書)の記述。

彼によれば接客で大切なのは客を「人としてみる」一方で「客として割り切る」こと。(略)客を「人としてみる」ということは「客を騙す気が無い」という誠実さをアピールすることだ。これはキャストが客に「私はキャバクラ嬢ではない」=「私は普通の女の子である」とアピールすることでもある。キャバクラにおける「客」イメージは「お金を落としてくれるだけの存在」だがキャストは客にこのようなイメージが伝わらないよう「客を人としてみる」。(略)一方で客を「客として割り切る」とは「普通の女の子らしさ」をアピールした結果、客が本気の恋愛関係を求めてこないように何らかの方法で「私はあくまでキャバクラ嬢である・だから店でお金を使ってね」と伝えること。このように客を「人として」みながら「客として」扱う方法は、ベテランキャストなら自然と身に付けているのだ。

依頼者を「人として見る」一方「客として割り切る」姿勢は重要。サービス業ではないがサービス業であるという矛盾したメッセージを弁証法的に統一するものと言えます。依頼者を人としてみるとは客を騙す気が無いと誠実さをアピールすること。換言すれば「私は正義の味方である」とアピールすることです。世間人の悪徳弁護士イメージは客から金をまきあげる嫌な存在なので弁護士はそんな印象を持たれないように誠実な人として振る舞うべき。他方。客として割り切るとは「正義の味方」をアピールし過ぎた結果、依頼者が「自己中心的な正義」を自分に求めてこないように何かの方法で「私は所詮サービス業であるから貴方の主観的正義には付き合いきれない」即ち「裁判所で通用する控えめな正義に留めてね・お金もかかるよ」と素直に伝えることです。