5者のコラム 「5者」Vol.41

このコラムの矛盾

 近時ある方から本コラムに対する嬉しい感想をいただきました。

君のコラムは矛盾してるよ。「弁護士は合理的でなければならない」と言ったかと思えば、別のところでは「弁護士は合理性をふりかざしてはいけない」と言う。あるところで「弁護士はサービス業であってはいけない」と言いつつ他方で「弁護士はサービス業であることを自覚しなければならない」と言う。「弁護士は欲望を軽視してはならない」と言いつつ「弁護士は欲望に振り回されてはいけない」と言う。「弁護士は呪いを理解しなければならない」と言いつつ「オカルトに走ってはいけない」と言う。「弁護士は役者である」と言いつつ「裁判が劇場になってはいけない」と言う。支離滅裂じゃないの?

たしかに私のこのコラムは論理一貫しておりません。矛盾したことを平気で述べています。支離滅裂ではないか?と言われれば、全く支離滅裂です。学者の論文で最も重視されるのは論理性です。鋭い問題提起に始まり、それまでの学説状況を整理し、自説を論理一貫した形で提示することが求められます。自己の主張の根拠となる文献なども正確に引用することが必須です。文献の恣意的な引用は御法度です。かような学問的スタンダードに照らせば、このコラムに学術的な意味はありません。雑多な本の中から著者の意図を無視してテキストを恣意的に拾い集め、これを下敷きにして法律実務を情緒的に表現しようとしているだけです。弁護士は矛盾した状況の中で仕事をしています。股裂のような状況下で必死にふんばっているというのが弁護士活動の実情です。弁護士を動かしている要因は正義だけでもなければ金銭だけでもありません。理性だけでもなければ呪術だけでもありません。学問的向上心を持っていますが俗世的欲望も持っています。「このコラムは矛盾している」という感想は嬉しいものです。それこそ私が表現しようとする弁護士の真の姿だからです。 

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