5者のコラム 「芸者」Vol.128

お客様は神様です?

 三波春夫さんのウェブサイトに次のように書かれています。

「三波春夫にとって『お客様』とは聴衆のことです。客席にいらっしゃるお客様とステージに立つ演者という形の中から生まれたフレーズです。三波が言う『お客様』とは商店飲食店などのお客様のことではないのですし、また営業先のクライアントのことでもありません。」

 上記説明を意識した上でのことと思われますが、有吉弘行氏が人気番組「マツコ&有吉の怒り新党」でこう述べていました。「出た出た。ほら客が偉いパターン!お客様は神様ですって、お前が言うな!それは店側が言うんだ、バカ。私は神様だ~って言ってるの頭おかしいだろ。」有吉弘行氏が言っていることは正論です。「お客様は神様です」というのは店側が謙遜して使う言葉であって、客が威張って使う言葉ではありません。「私は神様だ」なんて自分で言っているのを普通の人が聞けば「お前、頭おかしいだろ」と言われてもやむを得ません。弁護士の世界でもサービス業の意識が進みすぎると「依頼者様は神様です」となりかねません。弁護士側でそういった考え方をする人が出るのは勝手ですが、もしも相談者のなかで「自分は神様だ」と思うような人が出現してきたら、私は絶対に付き合いたくありません。医師にとって患者が「患者様」でないのと同様、弁護士にとっての依頼者は「依頼者様」ではありません。弁護士が「上から目線を戒める文脈で使う言葉」として「お客様」と呼ぶのはその弁護士の勝手ですが、依頼者が「自分の要求を正当化する文脈で使う言葉」とは違います。そんな依頼者には私も静かに叫びたいと思います。「依頼者は神様ですってお前が言うな!それは謙虚さを売りにする弁護士側が言うんだ。」