食品表示法研修
食品を多く扱う企業から「食品表示法について解説して欲しい」との相談を受けました。以前「食品衛生法」を解説したことがあり(vol140)その延長線上で引き受けました。*関係省庁のサイトに多くの資料が公開されています。私も適宜ダウンロードして活用させていただきました。
1 沿革
食品の表示に関する法律として「食品衛生法」「JAS法」「健康増進法」が存在した。近年「食の安全(=安心)」に対する消費者意識の高まりが顕著であるため、これらに規定された「表示すべき事項に関する規定」をまとめて制定されたのが食品表示法である。(平成27年4月1日施行)
2 内容
原則として一般用加工食品及び一般用の添加物は「栄養成分の表示」が義務付けられた。栄養成分表示により消費者自身が健康で栄養バランスがとれた食生活を営むことの重要性を意識し商品選択に役立てることで適切な食生活を送るきっかけとなることが期待されている。
健康増進法・薬機法・景表法は「表示してはいけない内容」に主眼がある。食品表示法は「表示しなければいけない内容」に主眼がある。食品表示法は具体的なルールを定めることを義務づけており(食品表示法4条)これにより定められたのが「食品表示基準」。表示すべき内容と禁止する表示を規定する(食品表示基準9条)。規制対象となる食品は加工食品(酒類を含む)生鮮食品又は添加物。これらを販売する場合及び不特定又は多数の者に対し無償で譲渡する場合に規制の適用を受ける。
規制対象となる者は商品の製造者や加工者・輸入者・販売者など(食品関連事業者等)。食品関連事業者等は食品表示基準に従い食品の表示をする義務がある(食品表示法5条)。
*バザー等で販売する者のように「販売を業としていない者」であっても、食品を販売したり不特定又は多数の人に無償で譲渡したりする場合には規制対象となる。
3 食品表示基準
食品及び食品関連事業者等の区分毎に次のような事項が定められている。
【表示すべき内容】
品質事項:原材料名や原産地などの食品の品質に関する事項
衛生事項:添加物や賞味・消費期限、アレルゲンなどの健康の保護に必要な事項
保健事項:健康増進を図るために必要な事項(栄養成分表示、機能性表示食品など)
【禁止される表示】
実際のものより著しく優良又は有利であると誤認させる用語
産地名を示す表示であって、産地名の意味を誤認させるような用語
機能性表示食品、栄養機能食品注等の食品に関する特定の用語
* 詳細は消費者庁ウェブサイトのQ&Aやガイドラインを参照。
4 栄養成分表示
2015(平成27)年に施行された食品表示法の栄養成分表示義務の猶予期間が経過。2020(令和2)年4月1日から完全施行。栄養成分表示が義務化された。容器包装に入れられた一般用加工食品及び添加物は「栄養成分の量及び熱量の表示」(栄養成分表示)をしなければならない。表示が義務付けられる栄養成分は熱量・たんぱく質・脂質・炭水化物・ナトリウム(食塩相当量で表示)。
5 食品の機能・特別の用途の表示
(1)保健機能食品
国が定めた安全性や有効性に関する基準などに従って食品の機能が表示されている食品。栄養機能食品・特定保健用食品・機能性表示食品の3種類が認められる。特定保健用食品、栄養機能食品及び機能性表示食品以外の食品は食品の持つ効果や機能を表示することができない(食品表示基準9条)。
① 栄養機能食品
1日に必要な栄養成分(ビタミン、ミネラルなど)が不足しがちな場合、その補給・補完のために利用できる食品。対象となる食品は消費者に販売される容器包装に入れられた一般用加工食品及び一般用生鮮食品。栄養機能食品として販売するためには1日当たりの摂取目安量に含まれる当該栄養成分量が定められた上・下限値の範囲内にある必要がある他、基準で定められた当該栄養成分の機能だけでなく注意喚起も表示する必要がある(食品表示基準7条及び21条)。
*許可申請を行う必要がない自己認証制度。科学的根拠が確認された栄養成分を一定の基準量含む食品は届出などせずとも国が定めた表現によって機能性を表示することが可能。
② 特定保健用食品(通称:トクホ)
身体の生理学的機能などに影響を与える保健効能成分(関与成分)を含み、その摂取により、特定の保健の目的が期待できる旨の表示(保健の用途の表示)をする食品。健康の維持増進に役立つことが科学的根拠に基づいて認められるもの(健康増進法43条1項、食品表示基準2条1項9号、3条2項、18条2項)。表示されている効果や安全性は国が審査を行い食品毎に消費者庁長官が許可。
③ 機能性表示食品制度
事業者の責任において科学的根拠を基に商品パッケージに機能性を表示するものとして消費者庁に届け出られた食品(特別用途食品、栄養機能食品、アルコール飲料、脂質・ナトリウム等の過剰摂取につながる食品を除く)。2015(平成27)年4月に開始。機能性を分かりやすく表示した商品の選択肢を増やすことで、消費者が商品の正しい情報を得て選択できるよう設けられた(食品表示基準2条1項10号、3条2項、18条2項)。機能性表示食品を販売する場合は国が定めた一定のルールにもとづき安全性や機能性に関する評価を行うとともに、生産・製造、品質の管理の体制、健康被害の情報収集体制を整え、販売日の60日前までに次の事項を消費者庁長官に届け出る必要がある。
「安全性及び機能性の根拠に関する情報」「健康被害の情報収集体制」
届け出られた情報は、消費者庁のウェブサイトでも公開。機能性表示食品は、特定保健用食品とは異なり、国が安全性や機能性の審査を行っておらず許可を受けたものでもない(注意が必要)。科学的根拠として届け出られた内容に疑義がある場合、食品表示法に基づく措置命令が下される。
(2)特別用途食品
乳児発育・妊産婦・授乳婦・えん下困難者・病者などの健康の保持回復など特別の用途を表示する食品。低タンパク質食品、経口補水液、乳児用調整粉乳、とろみ調整用食品など。特別用途食品として食品を販売するためには、その表示について消費者庁長官の許可を受ける必要がある(健康増進法第43条第1項)。許可に際して規格又は要件適合性について国の審査を受けなければならない。
6 健康増進法・食品衛生法等との関係
食品の表示広告を対象とする規定をもつ法律には他に健康増進法・食品衛生法・日本農林規格等に関する法律(JAS法)医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)・不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)・特定商取引に関する法律(特商法)がある。健康増進法、食品衛生法及びJAS法にあった「表示すべき内容」に関する規定は食品表示法にまとめられた。「表示してはいけない内容」は従前のまま残っているものがある。
誇大表示を禁止する食品表示基準9条1項の規定に違反することが疑われる表示は例えば景品表示法5条(不当表示禁止)や健康増進法65条1項(誇大表示禁止)に該当する可能性あり。著しく事実に相違または人を誤認させるような表示(誇大表示)は禁止。指針(ガイドライン)によれば健康増進法65条1項が対象とする者は「食品として販売に供する物に関する広告その他の表示をする」者。新聞社・雑誌社・放送事業者・インターネット媒体社等の広告媒体事業者等も対象となり得る。
*健康保持増進効果等の表示を行う場合は当該表示に関する合理的な根拠が必要。
現在も食品衛生法20条に「食品、添加物、器具又は容器包装に関し、公衆衛生に危害を及ぼすおそれがある虚偽の又は誇大な表示又は広告をしてはならない」との規定がある。
7 法規範の改正
食品表示法は、令和4年6月13日に成立した「刑法等の一部を改正する法律の成功に伴う関係法律の整理等に関する法律」により「罰則」の文言が改正され、令和7年に施行。下位規範である「食品表示基準」は多くの改正がされてきた(消費者庁ウェブサイトを参照)。令和4年4月1日施行の食品表示基準は加工食品の製品に占める重量割合上位1位の原料について原産地表示を義務付け。遺伝子組み換え表示や玄米及び精米に係る表示、食物アレルギーに関する表示も。
*今後も関係省庁のウェブサイトなど適宜確認し、規範の変遷に留意する必要があります。

