法律コラム Vol.131

親権者変更の申立

民法は「子の利益のため必要があると認めるとき」は親権者・監護者を他の一方に変更することができると定めます(819条6項・766条2項)。如何なる場合に変更の必要性が認められるかに関して①扶養能力と監護能力②現状の尊重(継続性の原理)③子の年齢、④子の意思などが考慮要素として挙げられています(村重慶一編「現代裁判法体系10「親族」新日本法規252頁)。以下に挙げるのは家裁に対し「母親から父親への」変更を求めたときのものです。(大幅に抽象化:平成14年)

1 協議離婚時の親権協議
  申立人と相手方は平成*年*月*日に協議離婚した。*市役所への届出に際して、未成年者*の親権者は(協議の結果)相手方になった。何故ならば「母親が親権者になるのが普通である」と聞いていたし、当時は「母親なので子を普通に育ててくれるだろう」と期待していたからである。
2 相手方による監護の状況
  離婚当初、相手方は未成年者を普通に育てていた。しかし「*」という男性(刑事事件を引き起こしたことがある粗暴な人間)と付き合うようになり相手方は未成年者をきちんと育てなくなった。しかも「*」から申立人の自宅や親戚の家に嫌がらせの連絡が入るようになった。ついには平成*年*月*日、相手方は申立人の自宅前に未成年者を放置した。未成年者が泣き叫んだ為に隣家の女性が気づいて申立人に通報して、相手方による未成年者放置が発覚したものである。申立人は驚いたが、同日から申立人が未成年者の身柄を引き取って監護養育している。
3 諸手続の状況
  未成年者が通う学校へは上記事実を連絡済である。3月末までは引き続き*小学校に、4月から*小学校に通わせるように手配している。本件は県の児童相談所にも係属しており、相談員の方から「早めに親権者変更の手続きをとるように」と強く勧められている。(以下略)

* 酷い事案だったので家庭裁判所は速やかに親権者変更審判を行いました(確定)。
* 本件は裁判所の判断が容易でしたが、多くの事案においては子どもの「取り合い」や「押し付け合い」を巡って調査官や裁判官は膨大なエネルギーを要するようです。難儀なことです。

次の記事

不貞行為の慰謝料請求