法律コラム Vol.108

不当な給与差押への対処

ある日「給与の差押えを受けた」という相談を受けました。執行裁判所から本人に送付されている書類を見ると「債務名義」は20年以上前の欠席判決でした。直ぐに受任し請求異議訴訟の提起と強制執行停止の申立を行いました。

(請求異議訴訟の訴状)

第1 請求の趣旨

  1. 被告から原告に対する、**簡易裁判所平成**年(ハ)第**号事件の、執行力のある第2回口頭弁論調書(判決)正本にもとづく強制執行は、これを許さない
  2. 訴訟費用は被告の負担とする
    との判決を求める。

第2 請求の原因

  1. 令和*年(ル)第**号債権差押命令に記載された請求債権目録によると、原告被告間には**簡易裁判所平成**年(ハ)第**号事件の、執行力のある第2回口頭弁論調書(判決)正本が存在するようである。
  2. 原告は上記判決正本の送達を受けた記憶は無いが、仮に送達が為されていたとしても、平成**年に為された判決の効力は送達後10年で消滅時効にかかる。原告は消滅時効を援用する。ゆえに現在この判決による執行は出来ない。このことは差押の請求債権目録で表示されている元本(約21万円)と損害金(約167万円)の関係を見れば一目瞭然である。
  3. よって原告は本判決の執行力の排除を求めて訴えに及ぶ。

(強制執行停止の申立書)

第1 申立の趣旨

相手方から申立人に対する、**簡易裁判所平成**年(ハ)第**号事件の執行力のある第2回口頭弁論調書(判決)正本にもとづく強制執行(**地方裁判所令和*年(ル)第**号債権差押申立事件)は、御庁に申し立てた請求異議事件の判決がなされるまで、これを停止する
との裁判を求める。

第2 申立の理由

  1. **地方裁判所は、令和*年*月*日、相手方を債権者・申立人を債務者として令和*年(ル)第**号債権差押命令を発した。
  2. 上記事件の請求債権目録によると、原告被告間には**簡易裁判所平成**年(ハ)第**号事件の執行力のある第2回口頭弁論調書(判決)正本が存在するようである。が、平成**年に為された判決の効力は送達後10年で消滅時効にかかる。原告は消滅時効を援用する。ゆえに現在この判決による執行は出来ない。
  3. よって原告は本判決の執行力排除を求め請求異議訴訟を提起したが、*地方裁判所に係属する執行を止める効力が無いので、執行停止を求めて申立に及んだ。

* 申立後直ちに裁判官との面談が行われ担保の金額が決まりました(17万円)。翌日、依頼者から預かった現金を管轄法務局に持参して供託。その供託書を受訴裁判所に持参し強制執行停止決定が得られました。これを執行裁判所に送付し執行手続は止まりました。しばらくして被告から直接に電話があり、和解の可否を打診されましたが、拒否したところ給与差押は取り下げられました。請求異議訴訟の第1回期日。被告は不出頭のため即日結審。2週間後に判決期日。当然ながら当方勝訴。それから2週間経ち判決が確定したので担保取消申立を行い同時に供託原因消滅証明申請を行いました。1ヶ月後、両書類を受領し法務局にて供託金の取り戻しを行って手続きは終了です。民事手続法のエッセンスが詰まった手順でした。

前の記事

相続分無きことの証明書

次の記事

不在者財産管理人の選任申立