法律コラム Vol.70

後遺障害認定に対する異議申立(改訂版)

 交通事故賠償において後遺障害等級認定が如何に為されるかは大きい問題です。自賠責認定が事後の訴訟を拘束するわけではないとしても賠償額は認定された後遺障害等級を踏まえて議論されるのが通常です。被害者代理人は認定等級に疑問があれば積極的に異議申立すべきです。

(申立の趣旨)
 後遺障害等級12級、少なくとも同14級が認められるべきである。
(申立の理由)
1 事前認定においては*氏の後遺障害は非該当とされている。その理由は①提出の画像上、明らかな外傷性の異常所見はない。頸椎捻挫後の頭痛・吐き気 頸部の慢性的な筋肉痛及び肩関節等の症状について症状の推移・治療経過等からも現症状が将来において回復が困難な症状と捉えることは困難である。②右足裏の筋肉のつり・痛み・神経鈍麻の症状について「受傷時に左下肢末梢神経麻痺を来すような骨折・脱臼等の異常所見は認められず、提出の左足部の画像上、明らかな外傷性の異常所見は認められない」から相当因果関係がない、というものである。
2 しかし、上記認定は明らかに不当である。
 (1)上記①について
イ 平成*年*月*日付*医師書面においてC6椎体に変形圧迫が認められている。
ロ 平成*年*月*日画像検査報告書でC6椎体に変形圧迫がC2/3椎間板に後正中~左神経孔へのヘルニアが認められている。C3/4~C6/7椎間板に変性と膨隆も認められている。
ハ 平成*年*月*日*医師報告書において陳旧性第6頸椎圧迫骨折が認められる。
ニ 平成*年*月*日後遺障害診断書において①精神神経症の障害についての他覚症状が明記されており、⑧脊柱の障害と運動障害、⑩上肢下肢の障害も認められている。
   以上により、提出の画像上、明らかな外傷性の異常所見は存在する。本件は障害の存在が医学上明らかになっているものとして後遺障害等級12級と見るのが相当である。頸椎捻挫後の頭痛・吐き気・頸部の慢性的な筋肉痛及び肩関節の症状につき、症状の推移・治療経過等から現症状は将来において回復が困難な症状と捉えられる。そもそも後遺障害等級認定においては労働能力喪失が一生続くことは要求されない。治療状況症状推移などを勘案し症状の将来にわたる残存が否定出来なければ後遺障害は認定されている。よって本件は少なくとも後遺障害等級14級には該当する。
 (2)上記②について
   提出の左足部の画像上、明らかな外傷性の異常所見は認められないという判断につき積極的な反証材料は有していないが、これは12級を否定する材料に過ぎない。被害者の右足裏の筋肉のつり・痛み・神経鈍麻の症状は治療状況・症状推移など勘案すれば、症状の将来にわたる残存は否定しがたい程度に達している。これらは事故前には存在せず、本件事故後に生じたものであるから相当因果関係も認められる。よって本件は少なくとも後遺障害等級14級には該当する。

* これは10年以上前の書面。現在から見ると理論的詰めが甘いのですが、若い頃の気合を感じます。本件は再審査の結果、後遺障害等級14級が認定されました。
* 近時、後遺障害等級5級の被害者に関し異議申立を行い2級に認定を上げることができました。平成24年7月5日、福岡地裁八女支部で本件に関する地裁判決が行われました。受任前は自賠責5級相当額(1574万円)提示でしたが、合計約7291万円の賠償金を得ることが出来ました。この判決には中間利息控除におけるホフマン係数の採用・既払金の法定充当・将来介護費用の算定における介護保険給付の非控除などの当方主張が織り込まれており理論的にも満足できるものとなりました。この判決は判例雑誌で紹介されました(自保ジャーナル№1878・12/9/27)。
* 後遺障害等級14級の被害者に関して異議申し立てを行い5級に認定を上げることが出来ました。平成25年7月4日、福岡地裁久留米支部で訴訟上の和解が成立しました。受任前の損保提示は後遺障害等級14級を前提に267万円強の提示でしたが、2300万円で和解できました。

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