5者のコラム 「5者」Vol.111

多面体として生きる

井上ひさし氏は「the座6号」で宮沢賢治に関しこう述べています。 

人間は多面体として生きる方がよろしいと説いているように見えます。野に立つ農夫も四六時中農夫であったらつまらない。それでは人間として半端である。朝は宗教者・夕は科学者・夜は芸能者。そういう農夫がいても良いのではないか。あらゆる意味で、できるだけ自給自足せよ。それがなって初めて他と共生できるのだよ。そうしないと、科学が・宗教が・労働が・あるいは芸能が・独走して、ひどいことになってしまう。(昭和61年3月)

弁護士も多面体として生きる方がよろしい。法廷に立つ弁護士も、四六時中弁護士であったらつまらない。それでは人間として半端である。朝は宗教者(易者)・昼は治療者(医者)・夕は科学者(学者)・夜は芸能者(役者芸者)。そういう弁護士がいても良いのではないか。あらゆる意味で出来るだけ自給自足をしなさい。それをやってみて初めて世間と共生できるのだよ。そうしないと科学が・宗教が・労働が・あるいは芸能が・独走して、酷いことになってしまう。法律は生活から切り離された世界にあるのではありません。宗教や科学や芸能と無縁の世界にあるのでもありません。複数の顔を持つマルチタレントな弁護士がいたほうが法律界の彩りが増します。自給自足とは全てを市場社会に丸投げするのではなく自分で出来ることは出来るだけ自分でやってみようということです。科学や宗教や労働や芸能は専門家だけのために存在するのではありません。専門外とされることであっても、弁護士が見よう・見まねでこれらを身に付けることは多面体として生きるために大切なことだと私は感じます。いろんな分野に見識を持つ、マルチタレントな半玄人になりましょう。