5者のコラム 「芸者」Vol.112

美人の本質観取

 「本質観取」とは哲学者フッサールが現象学という自分の方法論で提唱した観念です。ある概念の核心を「人々が共感できる言葉」で取り出すことを言います。藤野美奈子氏は「不美人論」(径書房)において大胆にも<美人の本質観取>を次のように提示しています(若干補正)。
  1 男に征服の喜び・頑張る気持ちを与えることが出来る。
  2 男の虚栄心を満たすことが出来る(世間に対しアピール)。
  3 楽して金持ちになれる可能性が大。
  4 ヒロインになれるというロマンが持てる。
  5 ちやほやされる・男性に歓迎される・貢いでもらえる。
  6 オシャレが楽しい(やりがいがある)。
  7 女性からも一目置かれる(けっこう重要な要素)。
  8 気に掛けてもらえる(世間が親切で優しい)。
  9 たいがいのことは許される(若い時のみ)
 10 マイペースで良い・笑わなくて良い(ブスは笑顔が義務)。
 昔、司試受験生にとって司法試験合格は征服の喜びを与えるものでした。金持ちになれる可能性が大でした。ヒーロー・ヒロインになれるロマンがありました。世間からちやほやされ・歓迎され・稼げる幻想がありました。皆から一目置かれ・気に掛けてもらえました。修習生はたいがいのことが許されました。世間に媚びずに済みました。要するに修習生と弁護士は「美人」だったのです。しかし弁護士業務から上記した<本質観取>は消滅しつつあります。今後の弁護士は世間から厳しい視線に曝される「不美人」の悲哀を背負っていかなければならないのでしょうか。