5者のコラム 「易者」Vol.144

中間業者との連携

水月昭道「お寺さん崩壊」(新潮新書)に次の記述(要旨)があります。

お寺を護持してゆく使命感を抱え、そのためだけに邁進しながらも、それがゆえに貧困層へと落ちてゆく住職は今こうして増え続けている。そこで、生きてゆくため、そして跡継ぎを造るための家庭生活を実現し寺院存続を図るため、第3の手段がとられ始めた。それは葬儀業者との連携である。何を差し置いても葬儀となればそれこそ必死で駆けつけるのは、ひとえに「自分の檀家だから」なのである。否もっと正確に述べるならば、檀家以外の葬儀を引き受けるような事態はずっと生じてこなかったのだ。だが今や本家から分家独立していった家庭など檀那寺を持たないところの方がもう一般的になり始めている。それを尻目に葬儀社はこれをビジネスチャンスと見て取ったらしい。従来の確固とした寺檀関係に生じ始めた隙間を狙い撃つように自らに都合の良い寺を擁し、新たなタイプのお客様への紹介までを狙いだしたのだ。「ウチはお布施が良心的なお寺さんを紹介できますよ」。困窮している寺は立場が弱いので、無論のことだが「言い値」で引き受けざるを得ない(56頁)。

正義を実現する使命感を抱えながらも貧困層へ落ちてゆく弁護士が増えています。そこで生きてゆくために第3の手段がとられ始めました。中間業者との連携です(国営業者も含む)。昔、弁護士と依頼者の繋がりは人脈でした。人的関係を抜きに法律業務を開始する手段は普通ありませんでした。中間業者は弁護士との繋がりを持たない市民をビジネスチャンスと見定め、弁護士依頼者間に生じた隙間を狙い撃つ如く「自らに都合の良い弁護士」を確保し新たなタイプの「お客様」への紹介を狙いだしています。「ウチは費用安価で良心的な弁護士を直ぐ紹介できますよ」。困窮している弁護士は立場が弱いので中間業者の「言い値」で引き受けざるを得ないのです(涙)。

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