5者のコラム 「医者」Vol.155

エリート集団内部の対立

鳥集徹「医学部」(文春新書)の記述。

医学医療界では抗ガン剤・がん検診・ワクチン・医療事故といった問題で立場や考え方の違いから対立することが良くある。特に学会で主流にある医師たちは治療推進派や医療擁護派の側に立ちがちで、少数派の医師や対立する患者側に対し容赦ない批判を向けることが良くある。それが冷静で科学的な批判ならまだ良いのだが、ときに感情的になって学会やネットで特定の人をつるし上げたり、被害を訴える患者たちを集団的に叩いたりするまでエスカレートすることがある。が第3者から見ていると人権を一番に尊重すべき医師が感情的な言葉で対立当事者(ときに患者)を叩きのめそうとする姿を見るのは本当に悲しくなる。日本有数のエリート集団であるだけに医師は「自分たちは絶対的に正しい」「自分たちが間違うはずがない」と思いがちなのかもしれない。だが「現在正しいとされていることが将来間違っていると判ること」は往々にしてあることだ。

弁護士業界も考え方の違いは激しく、主流にある方々が反対派に対して容赦ない批判を向けることがありますし、少数派が主流派に対し集団的に叩いたりするまで対立がエスカレートすることもあります。言葉でケンカすることが得意なだけに火が付くとなかなか収束しない。しかし、人権を一番に尊重すべき弁護士が感情的な言葉で「対立当事者を叩きのめそう」とする姿を見るのは悲しいものです。日本有数のエリート集団と(世間的に)思われている弁護士は「自分たちは絶対的に正しい」と思いがちですが「現在は正しいとされていることでも将来から見たら間違いだったと判ること」だって当然あり得ます。それゆえに弁護士こそは「知的な謙虚さ」を身に付けるべきでしょう。特に政治的メッセージを発する場合、発表スタイルにはもう少し工夫がいるように思います。

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