5者のコラム 「学者」Vol.155
情報処理スキルの限界
山口周氏は「世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか?」(光文社新書)において自説を見事に要約しています(14頁「忙しい読者のために」)。
1 論理的・理性的な情報処理スキルの限界が露呈しつつある事実
① 多くの人が分析的・論理的な情報処理スキルを身に付けた結果、世界中で発生している「正解のコモデティ化」(差別化の消滅)。
② 分析的な情報処理スキルの「方法論としての限界」(意思決定が停滞)。
2 世界中の市場が「自己実現的消費」へ向かいつつある事実
先進諸国における消費行動は「自己実現のための記号の発信」だ。
3 システムの変化にルールの制定が追いつかない状況が発生している事実
変化の早い世界においてはルールの変更はシステムの変化に引きずられる形で後追いでなされる(クオリティの高い意思決定をするためには美意識が不可欠だ)。
筆者の問題意識は広範囲に及ぶもので、私が何かを付け加えることはありません。私が出来るのは上記3点を紹介して将来の弁護士業務に対する「問題意識」を控えめに発信することだけです。
1① 多くの市民が法律情報の情報処理スキルを身に付けた結果、法律知識だけでは専門職としての意義を感じられなくなることへの対応が必要ではないか?
② 膨大な情報処理で意思決定が停滞することへの対処。直感の重要性?
2 市民の「法的自己実現のための情報の発信」に対してどう対応するのか?
3 システム変化にルール制定が追いつかない状況において「ルール主導者」として実務法曹はどうやって「クオリティの高い意思決定」をなしうるのか?