5者のコラム 「医者」Vol.159

他者を攻撃する毒と成熟による甘み

 南雲吉則医師は「空腹が人を健康にする」(サンマーク出版)で述べます。 

自然界の動物が、コーヒーの実やお茶の葉っぱをどんどん食べたら、その植物は滅んでしまいます。そこで食べると吐き気を催すような毒を持つようになりました。それがカフェインです。人間は満腹の時の眠気覚ましにその毒を飲んで副交感神経を刺激しているわけです。(略)お茶の中にはタンニンが入っています。ちなみにタンニンの「タン」は「なめす」という意味。昔は皮をなめすのに使われていました。つまり頑丈なタンパク質を変成させる性質があるのです。何故このような毒ともいえる成分がお茶に含まれているのか。これはお茶の木が生き残るための防御作用なのです。お茶の葉には、ハマキガという、ガの幼虫がついてその葉を旺盛に食べます。お茶の葉もガの幼虫に食べられる一方では枯れてしまいます。そこでガの幼虫に消化吸収障害を起こさせるためのタンニンという毒を持つようになったというわけです。お茶の他、タンニンを持っている植物としてカキやバナナがあります。いずれも実が熟するまでの青いときには虫や動物に食べられないようにタンニンの量が非常に多いのです。反対に熟してくると、タンニンの量がぐっと減って目立つ赤や黄色になり、いい匂いを出して、甘い味になって「どうぞ私を食べて種を遠くまで運んで下さい」と訴えかけるのです。

若い頃「他の人に吐き気を催すような毒」を持っていました。内面を他人に侵されないようバリアを張り「踏み込んできたら消化吸収障害を起こさせてやる」と毒素成分を分泌していました。が今の私は毒素が無くなっています。白髪が目立ち良い匂いを出し甘い味になっています。私には守るべき自分の内面なんて無いし毒も無いので、どうぞ私を食べて遠くに運んで下さいね(笑)。

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