久留米版徒然草 Vol.134

「寅に翼」の構造分析

このウェブサイトで美輪明宏主演「愛の賛歌」を構造分析したことがあります(役者87)。物語が①苦難②栄光③絶望④再生で進行することを論じました。新約聖書的図式ですが別にキリスト教に限る話ではなく一般性があるように思われます。今回の朝ドラに関して言えば弁護士編は①イエ制度的因襲との戦い・司法科試験の難儀②日本初女性法曹としての栄誉③戦争による職業的難儀と家族の死④日本国憲法による再生という流れでした。裁判官編は①家庭裁判所創設の難儀②有名人となって裁判官としての技量も向上③家族との軋轢・地方への転勤④(まだ不明)という流れになりましょう。現在③の真っ只中にあり、主人公は今後しばらく苦悩に突き落とされるでしょう。特筆すべきは③の原因が戦前は政治状況(個人ではどうしようもない)だったのに対し戦後は主人公の内面(個人の問題)であること。猪突猛進型の主人公の性格が戦前は武器だったのに対し戦後は弱点になっている。両者の対比が見事です。この主人公の苦悩を切り開くのは少女漫画的救済図式(王子様たるイケメンとの再婚)なのでしょうか。たぶん、それだけではないはず。脚本家は、男女を問わず現代に生きる者が感銘を受ける「別の何か」を用意していると思います。今後の展開が楽しみです。
*本日放送分にて小さな「再生」が描かれました。新潟は「新生」になるのでしょうか。

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